こんにちは。宮本です。

お盆ですね。
いかがお過ごしですか。


昔の話です。

知り合いの男の人で、ま、仮に建君としておきましょう。
彼には同い年くらいの彼女がいましてね。
こっちは仮に希さんとしておきますね。

建君も希さんも同じ市内に住んでいるんですけど、まあ学生時代にバイトで知り合って、仲良くなって付き合い始めたんですね。
仲良くなったと言っても、それまでほぼバイト先でしか会ったことはなかったから、当たり前ですけど、最初はお互い、相手がどういう人かはよく知らないんですよ。
共通の知り合いなんかもいなかったそうで。

アルバイトで仕事しながら顔合わせてて、お互いに、かわいいなぁ、カッコいいなぁなんて思ったりしてて、打ち上げかなんかで飲み行って意気投合してお持ち帰りしちゃったりして、ま、若い頃なんて言うのは、そういうふうに勢いで付き合いだしたりもするものです。

希さんは、まあ誰が見ても第一印象はいいんですよ。
愛嬌があって、怒る姿が想像できないような、それでいて、たまに見せる女性らしい仕草が男心をくすぐるようなタイプ。
そんな子に彼氏がいないことも驚きだったし、まさか希さんのほうから告白してくるとも思ってなかったんですね。

スタイルはいいし積極的だし、まあ自分にはもったいないような素敵な子だとは思いますけど、ラッキーがめぐってきたんだから、こうなりゃ精一杯、この子のために頑張ろうと。
真面目な青年ですね。

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お互いに学生だし、親元から通ってるから、付き合ってるって言ってもそんなに毎日は一緒にいられるはずもないんですね。

バイトも必ずシフトが一緒という訳でもなく、夏休みとかになればいっぱい会えると思いますけど、学校があるときは週に2回くらいしか会えないんですね。

その頃、まだ携帯電話の通話料金も高くてね。
ポケベルはありましたけど、携帯なんてそもそも持ってる人は少なかった時代。
電波も悪いし、携帯のメールなんかもまだ一般的でない時代でしたから、まあ、普通に家の電話にかけたりして、別になんかの連絡とか相談でもなく、声聞けてれば安心みたいな感じで、そういう電話のやり取りが多かったんですね。

建君の家では長電話してたら叱られたんですけど、希さんの家はそのへんは鷹揚で、特に叱られることもないという家だったんですね。
前の彼氏のときには5時間も話してたことがあるとか、そんな話もしてたんですね。

前の彼氏の話になったから、これまで何人と付き合ってきたとか、なんて呼ばれてたとか、まあ、聞きたくないけど確かめておきたい気持ちにもなりますよね。

で、あんまり話したがらなかったけど、建君が自分の付き合ってきた人数とかも正直に言ったら、希さんも渋々話し始めてくれたんだそうです。

最初はどんな人で次はこんな人、その次はこうでって聞いてたら、自分が11人目だってことだったんですね。
かなり多いほうだと思いますけど、みんな長くは続いていないんですね。
1か月も続かなかった人が3人いたそうで。
半年以上続いたのは1人だけで、それも遠距離恋愛だったって言うんです。

身体の関係にあった人は10人のうち2人で、建君が3人目だということでした。

その時点で交際を始めて2か月くらいは経過してて、ホテルに行ったことも何度かあったので、ちょっと誇らしくなっちゃったんでしょうね、建君、もっと仲良くなりたいし、喜ばせてあげたいから、海の見えるペンションに泊りに行こうよって希さんを誘ってみたんですね。

食事に行くとか夜景を見に行くとか、それかラブホテルに行くくらいで、恋人同士らしいデートは初めてだったから希さんも嬉しかったんでしょう、2人の予定が合うのは8月の中旬だから、その日に行こうって決めて、まあ、その日のために水着だったりパジャマだったり、その前に買いに行きたいってなりましてね。

男はセックスさえできれば、言ってみりゃ後は何でもいいんですけど、女の子にとっては、こういうのは特別なイベントですからね。
新しいのを着て行きたいと思うものです。

じゃあ、今度一緒のバイトのときにシフトを確認して、旅行の買い物に行く日を決めようってなって、じゃあね~、なんて言って受話器を置いたんですね。

ワクワクして寝られなくなっちゃったんですけど、よく考えたら元カレはやっぱり多いんですよ。
で、あんなにいい子なのに長続きしないってのは、どうも合点がいかないんですよね。

ま、本当は長く真剣に付き合ってた人がいたかも知れないし、経験人数だって自分の数に合わせて少なく申告したのかも知れないし、正直には答えられないから、気を遣って小嘘を交えて話してくれたんだろう、酷いこと聞いちゃったなくらいに思うことにしたんですね。

希さんは見た目も性格も倒錯したタイプには見えないんですが、ベッドではいろんなことをしてくれる子でした。

建君は真面目ですけど寝取られ属性の変態だから、そういうこと聞いたらオナニーは捗るんですよね。
知らない誰かに調教されてる情景なんかを想像したりしたんでしょうね。

で、バイトが一緒になった日、次の週末に一緒に買い物に行くことが決まったんです。
その週末には会えるんですけど、会える時間は夜からなんですね。
夜でもゆっくり買い物できるお店は少ないので、自然と行けるお店は限られてくるんです。

住んでいる町からは車で1時間程の、2つ3つ離れた町にあるお店です。
お互い、そのお店には行ったことはありますが、一緒に行ったことはなかったんですね。
じゃああのお店だね、そうだね、そこしかないもんねと。

建君の家のほうがそのお店からは遠いので、建君が希さんを車で迎えに行くことになったんですよ。
希さんも運転は出来ますが、建君はスポーツタイプの車を買ったばかりで、古いんですけどとても綺麗にしてて、デートするときにはいつも建君の車で出かけていたんですね。

で、買い物に行く日になって、建君は彼女を時間通りに迎えに行ったんです。

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希さんは先に来ていて、建君が見えたと思ったら、走り寄って乗り込んできてくれました。
待たせちゃったね、なんて言うんですけど、すぐに肩にもたれかかってきてくれるんですね。
走りながらキスしたりして、そのうちスカートの中に手を滑り入れて指先で触っていると、彼女も彼の固くなったものをさすりだすんです。

微笑ましいですね。
ま、たまにしか会えないから、会えたときにはそうなりますけど、車でのデートでこんなことになったのは初めてでした。

こういうの、トラックとかに乗ってると、何かやってるのが見えるときがあるんですよね。

まあ、ゆっくり行ってもお店はまだ閉まらないしってことで、ちょっと山のほうの人気のないところに行って車の中で愛し合ったんですね。

二人は車の中でするのは初めてだったんですけど、誰かに見られてないかドキドキしますよね。
幸い、誰も近づいてくる様子はなかったので、夢中になっちゃったんですね。

車の中ですると事故に遭うとか言いますけど、そんなの迷信ですからね。
若いから始まっちゃったら止められないんですよね。

さすがに遅くなったら買い物もできなくなるので、2回目にいくところを希さんが制止して、当初の目的のお店に向かうことになったんですよ。

建君はまだスイッチ入っちゃってますから、下半身は裸のままで、彼女に口でしてもらいながら走り出したんですね。
広い道に出るまでは、ですね。

よく知らない山の中に来ていたんですけど、ま、そのまま来た道を戻ればいいので、そのへんは軽く考えていたんでしょうね。

でも、来た道を戻ってみても、元いた道に出られないんですよ。

なんかさっきと違う山に来ちゃったみたいなんですが、ま、街の明かりは見えてるもんで、分岐を街が見えるほうに進んだりしてみたんですけど、それでもまた違うところに出ちゃうんですよ。
目標は見えてるのに、行きたいように行けないんですね。

頭を押さえてずっとしゃぶらせてたんですけど、さすがに不安になってしぼんじゃいましてね。
そんなだから彼女の顔を起こして、いったん停めてパンツ履いて服装も整えたんですね。

「あそこに行きたいんだけど、どうも違うところに来ちゃってるみたいだ」と建君が言うと、彼女は激しく動揺しだしちゃったんですね。
「この山の道、来たことある」と。

震えて半ベソになっちゃって、まあ、建君は自分が道を間違えたせいだから、謝って落ち着かせようとしたんですけど、道を間違えて帰れなくなっていることではなく、顔を上げたら知らないところなのに見たことのある景色だったということが恐ろしいというんです。
夢で何度もこの道で迷ったことがあると。

で、その夢では、下りていく道を行くと、山あいに狭い畑があって、その道は突き当たるんだと言うんです。

建君はそんなの知らないし、当然、初めて来た道なんですね。
「デジャブったね」なんて言いながら、とりあえず買い物に向かうことにして、ま、今は山の中だけど、下りていけば人家もあるだろうということで、下のほうへ車を走らせることにしたんですね。

狭いながらも舗装はされているんです。
まあ、道路の脇は植林された桧や杉の林だったり、竹やぶだったりするんですけどね。
電気はなくて真っ暗ですから、注意深く進んでいきます。

対向車が来たら入れ替われないくらい狭い道だな、と思いましたが、帰るための道順を聞けるから対向車には遭遇してもいいかもな、と思って進んでいきました。
でも、行けども行けども対向車には遭えなかったんです。

希さん、震えながら「お地蔵さんが怖い」とか言い出しちゃってね。
なんの話かわからないんですが、走ってると遠くから微かに、ごにょごにょと何か音がするんです。

だんだん音が大きくなって行って、それが聴きとれるようになると、それはお経を大人数で読んでるみたいな音だったんです。
山道を下りていくにしたがって、だんだん大きくなっていくんですね。

大きなお寺が近くにあって、夜行でもやってるんだろうと思って気にしなかったんですが、お寺なんてさっき見たかな、と思いながら、ちょっと不安になってきたんですね。

で、ようやく坂が終わって、ちょっと開けた場所に出たので、あたりをよく見てみるんですが、お寺みたいな建物はなかったんですね。
ただぽつんと、畑のようになってたんです。
この場所に出た時には、読経みたいな音は止んでいました。

周りが林に囲まれてて、電気もない、だいたいテニスコートくらいの小さい畑。
土だけはきれいに耕されてて、でも作物はないんです。

もうずっと希さんは下向いて目を瞑って、建君は彼女の手を握ってあげてたんですけど、畑に出たので、「さっきとは違うところに出てきたよ」と、彼女にも見せたんです。
そしたら「ここも知ってる」と。
いよいよ青ざめてきちゃってね。
またぎゅっと目を瞑って下向いちゃいました。

畑のあぜ道ですから、狭くて引き返せないので、そのまま進んでみると、トン、と突き当たってしまいました。
突き当たったところには、古い、石が積まれたお墓のようなものがありました。
「あ、・・・ああ、・・・これ・・・」
彼女が見ていた夢と同じものだったそうです。

もしかして希さんと関係ある場所なのかもと思い、彫られた字をよく見ようと車を降りると、お墓の隣に小さなお地蔵さんがあることに気付きました。

他にも何かあるかも知れないし、つまずかないように、ふと、お地蔵さんのほうをチラッと見たら、そのお地蔵さんと目が合ったような気がしました。
なんて言うか、生きた目をしてるような。
「うっわ...」
そのお地蔵さんにずっと見張られているとしか思えないんです。
さすがに気持ち悪かったので、彫られた字は読まずに車に戻ったんですね。

車に戻ると、希さんも相当怖かったのでしょう、焦点の合わない目で車の外を見ながら、何かブツブツ言い続けていました。

その声、さっきまで聞こえてたお経の声と一緒じゃないですか。
「ひっ」と思ったけど、この状況、なんとかしなきゃいけない。

そして声をかけようとしたら、希さん、突然上向いて「あががガガ...」とうめき声をあげた後、ガクッと気を失ってしまったのです。
「おい! どうした!」と声をかけても、ゆすってみても起きてはくれません。
背中に冷たいものが走ったような感覚を覚え、鼓動も荒れ、「ヤバい、ヤバい! とりあえずこの場を離れなきゃ...!」と、お墓の前の少し広くなったスペースで切り返したんですが、また先程の山に入るしか、走れる道はありません。
もう出られるまでどこまででも行ってやると決めて、もと来た山道に入っていきました。

ところが、あんなに迷った道だったのに、10分も走った頃か、気付いたら、元いた国道のすぐ近くに出ることが出来てしまいました。

「やっと戻れたけど、今の何だったんだろう、でも、もう大丈夫だ」と。
そしたら早く希さんを起こさなきゃと。
近くのコンビニまで行って駐車場に車を停めて、「希、起きて」と声をかけましたが、すぐには起きてくれないんです。

ちょっと強めにゆすったりしてもダメで、次は強度を上げて肩を叩いてみたり、なんとか起こそうとしてみたんですね。

そうしたら急にパッと目醒めて、
「さっきから何? ゆすったり叩いたりして、酷いじゃない」と。
「えっ⁉︎ だってさっき気を失って、それから今まで…」と言いかけたところ、「なんの話? あたし、さっきからずっと起きてて、...してあげてたじゃん」と。

建君にはどういうことだか全然理解できないんですが、それでもいつもの希さんに戻ったから、とりあえずお店に行こうとするも、もう買い物するのには間に合わない時間になってしまっていたんですね。

希さんは「もう~、建君があんなところで余計なことするから買い物できなくなっちゃったじゃない」と建君をなじり、ま、建君にも責任はありますから、そこは素直に謝ったんですけど、「あんなに道に迷うなんて」と言っても「入ったところから出てきただけじゃん」と言うし、お墓があった畑のこととか夢で出てきたところに行ったんでしょって聞いても「さっきからなんの話? 建君、大丈夫?」なんて笑っちゃってて、あんなことがあったのに全く覚えてる様子がないんです。

会ってから今までちゃんと起きてたって言うんですけど、じゃあ、自分がさっき見ていたものは何だったんだろうと。
エッチ1回にしては時間が経ち過ぎてることも、自分の感覚と照らし合わせたら説明がつきませんから、そのことを質したら、能天気にも「2人とも気持ち良過ぎて時間忘れちゃったんだね。それより赤ちゃん出来ちゃったらどうしよっか」とか言ってるんです。

希さんのことを今まであんなに可愛いと思っていましたが、さすがに気味悪くなってしまい、その一件以降、希さんと少し距離を取るようになってしまいました。
ペンションには行きましたが、そこでいい思い出は作ることはできず、その後すぐにバイトも変えて、連絡を絶って別れたそうです。

あの事があってから、建君におかしなことは起こっていません。
もしかしたら、一緒にいるといろいろおかしなことが起きるから、それで希さんは何人と付き合っても長続きしないのかも知れない、なんて言ってました。
それと、当時の知り合いにあたっても、不思議なくらい、希さんのことを覚えている人がいないんだそうです。

何年も経ってからですが、建君、同じ道を辿ってあの山道へ行ってみようとしたんですが、そんな山道はどこにもなくて、どこから入ってどこから出てきたのか、建君には見当もつかなかったそうです。
地元の山に詳しい人に聞いても、あのあたりにそんなところはないと言われるだけだったそうで。
グーグルマップで調べても、山から見えたあの景色から計算してみても、どうにもあの場所の位置がわからなかったと。
それでもあのお墓のあった畑の情景と、お地蔵さんと目が合ってしまったような感覚は、今でもはっきり思い出せるそうです。

不思議なことって、あるもんですね。

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